一般社団法人の設立の方法は?手順ごとにわかりやすく解説
一般社団法人は非営利法人
一般社団法人は、「非営利法人」に分類される法人組織で、株式会社や合同会社など、利益を目的とした法人とは区別されます。
そのため一般社団法人は、非営利法人として登録する必要があり、決められた流れに沿って手続きを進めることが求められます。
ここでは、一般社団法人設立に必要な手続きについて、手順を追ってわかりやすく解説します。
設立後に必要な作業についても紹介しますので、一般社団法人設立する際の参考にしてください。
一般社団法人設立のステップ
一般社団法人を設立するには手順があります。
主な手順の流れは、「理事の専任」「基本事項の決定」「定款作成」「登記書類の作成」「登記申請」「銀行口座の開設」です。
理事の選任
一般社団法人の設立には、2名以上の社員が必要になります。
社員を確保したら、その中から理事を1名選びます。
組織に理事会を設置する場合、3名以上の理事を専任する必要があるのです。
また、一般社団法人の中でも、監事を設置する場合は、監事も決めます。
理事や監事の選任は、定款認証後までに行えば問題ありませんが、組織の軸になる社員の選定は、できるだけ早い段階で済ませるのが無難です。
基本事項の決定
基本事項は、設立する社団法人が、事業を展開するために必要な項目のことを言います。
主な基本事項は、「一般社団法人の名称」「事務所の所在地」「組織の構成」「事業内容」「事業年度」「広告方法」などです。
名称はすでに登録されている団体と同じものにならないよう気を付けます。
使用される符号は決められたものを使うなど、制限があるのです。
名称を決める際は、事前にルールを把握しておくことをおすすめします。
定款作成
その会社や団体が定めた、規則をまとめたものが定款になります。
定款には、基本事項で決めたことを記載する必要があり(「絶対的記載事項」)、一つでも欠けると無効となりますので、注意が必要です。
「社員に剰余金や残余財産の分配を受ける権利の付与」など、定款に盛り込んでも無効となることもありますので、確認しながら進める必要があります。
定款の作成は、専門的知識を必要とする場合が多いため、公益法人制度に詳しい専門家に相談すると良いかもしれません。
定款作成後、社員は署名と押印をし、定款を公証役場に提出します。
公証役場では、定款が適切であるかどうかを審査し、問題なければ定款認証となるのです。
登記書類の作成
公証役場での定款認証を済ませたら、次は法務局に提出する登記書類を作成します。
登記書類は、法務局に提出するのに必要な書類です。
必要になるのは「一般社団法人設立登記申請書」「設立時理事の選任決議書」「定款」「設立時理事の就任承諾書」「主たる事務所所在場所の決定に関する決議書」「設立時代表理事の互選に関する書面(設立時代表理事選定書)」「印鑑届出書」「設立時代表理事の就任承諾書」「印鑑カード交付申請書」「設立時理事の印鑑証明書」「登記すべき事項(通常はCD-Rに記録)」などです。
複数ありますので、事前に必要となる書類を確認しておくようにしましょう。
書類が一つでも欠けると、申請できなくなりますので、法務局に提出する前によく確認することも、登記書類作成で重要な点になります。
登記申請
登録申請は法務局で受け付けています。
一般社団法人の理事が申請をするのが原則ですが、手続きを代理人に委任することも可能です。
その際委任状が必要となりますので、作成しておきましょう。
一般社団法人が設立された日は、法務局に登録申請した日と同じになります。
通常1週間以内で登記は完了し(書類に不備がある場合はそれ以上になることもあります)、その時点で組織は活動開始可能です。
「印鑑証明書」と「登記事項証明書(登記簿謄本)」の取得は、登記完了後に行います。
設立後に必要なこと
一般社団法人の設立は、法務局に申請した段階で完了しますが、実際に活動するには、諸手続きが必要です。
主な手続きには「法人銀行口座の開設」「税務署に必要書類を提出する」「労働基準監督署に必要書類を提出する」「年金事務所に必要書類を提出する」「公共職業安定所に必要書類を提出する」があります。
法人銀行口座の開設
組織の運営で欠かせない法人の銀行口座は、一般社団法人の登記が完了してから開設します。
開設には、印鑑証明書や登記事項証明書のほか、銀行が指定する書類が必要になりますので、事前に銀行に問い合わせ、確認することをおすすめします。
税務署に必要書類を提出する
税務署に申請する書類は複数ありますが、「法人設立届出書」「青色申告の承認申請書」「棚卸資産の評価方法の届出書」「収益事業開始届出書」「給与支払事務所等の開設届出書」「減価償却資産の償却方法の届出書」などがそれにあたります。
すべて必須書類というわけではなく、必要に応じたものを提出します。
たとえば法人設立届出書は、収益事業がなければ提出する必要はない(年間8,000万円以上の収入がある場合は、損的計算書を税務署に提出する必要があります)というように、ケースバイケースですので、必要と思われる書類について、一つひとつ確認しながら準備すると良いでしょう。
たとえば収益事業開始届出書は設立してから2ヶ月以内に届け出るという風に、届け出に期限が設けられている書類もあります。
各書類の提出期限を事前にチェックしておくことは不可欠です。
税務署に書類を提出するということは、国に提出することになりますので、それとは別に都道府県税事務所にも届け出が必要になります。
都道府県税事務所に提出するのは、法人設立届出書です。
市区町村役場にも、法人設立届出書を提出します。
収益事業を行わない場合、税務署に法人設立届け出する必要はありませんが、たとえ非営利法人であっても、都道府県税事務所と市区町役場には提出が義務づけられています。
各各自治体では書類の提出期限を設定していますので、提出が遅れないように気を付けましょう。
労働基準監督署に必要書類を提出する
労働基準監督署は、企業が労働基準法を遵守しているかどうかチェックする行政機関です。
労働基準監督署に届ける必要書類は、「労働保険関係成立届」「概算保険料申告書」「就業規則届」「労働保険概算保険料申告書」などです。
従業員を雇う予定がない場合、労働保険の手続きは不要になります。
書類の中には提出期限が設定されているものもありますので、事前に確認しておきましょう。
年金事務所に必要書類を提出する
年金事務所(旧称・社会保険事務所)は、日本年金機構が運営・管理する機関で、年金に関する業務を行います。
年金事務所に提出する主な必要書類には、「新規適用届」や「被保険者資格取得届」があります。
どちらの書類も、従業員を雇ってから5日以内に届け出するよう決められているのです。
「健康保険被扶養者届」は、従業員に扶養者(配偶者や子ども)がいる場合に提出が必要になる書類です。
公共職業安定所に必要書類を提出する
公共職業安定所はハローワークのことで、従業員を雇う予定のある場合に、届け出が必要になります。
公共職業安定所に必要な書類は、「雇用保険適用事業所設置届書」と「雇用保険被保険者資格取得届書」です。
一般社団法人申請にはコストと時間がかかる
たとえ非営利法人でも、一般社団法人の設立には、費用がかかります。
公証役場での定款認証や法務局での設立登記申請といった届け出から、各種証明書の発行など、細かな申請も含めると、ある程度まとまったお金が必要になります。
どのくらい必要になるかには多少個人差がありますが、15万円ほどかかると見ておいたほうが良いでしょう。
専門家に依頼すると、その分費用がかさみます。
申請から運営をスタートさせるまでにかかる時間は、個人ですべてやるか、専門家に依頼するかで大きく変わってきます。
個人なら1ヶ月~2ヶ月、専門家に依頼する場合は2週間~3週間が目安になります。
しっかりと流れを把握して準備しましょう
一般社団法人の設立は、通常の株式会社設立とは異なる手続きを経て完了します。
失敗を避けるには、事前に手続きの流れを把握し、必要なものを準備してから取りかかることをおすすめします。
設立にあたり、作成する書類が複数ありますので、時間の短縮を優先するなら、専門家に相談しながら進めるのが無難です。